先日友人と、吉野・金峯山寺の秘仏、蔵王権現を拝観してきました。
　唐突に、あるご住職からのおすすめ。
　　　「日本最大の秘仏中の秘仏、蔵王権現が公開になる。
　　　　夜間の特別拝観に行きなさい！」
　秋は超～忙しくて、旅に出る間などないはずが、
　なんと不思議なことに予定が繰り下がり、どんぴしゃりの日時に暇ができ、
　わけもわからないけど、とにかく行こうと、鎌倉から車を飛ばし９時間半。
　ゲリラ豪雨やF１の渋滞かいくぐり、行ってきました！！！

　漆黒の夜、締め切った本堂には蝋燭の灯り、
　いくつものホラ貝が響き渡り、太鼓の音も轟いて、独特の雰囲気の中、
　２０人ほどの修験道の行者様たちが、すごい勢いで読経。そして・・・
　闇夜の浮かび上がったのが、この蔵王権現です！

　１３００年前、この世乱れを案じた役行者（えんのぎょうじゃ）の１０００日修行の末、
　出現した、純、日本生まれの仏さまの姿だそうです。
　どこにもないような＜青黒：せいこく＞色した、憤怒の表情で、
　なんと７ｍの巨体が三体！

　それはすごい迫力！　ホラ貝の響きもドラマチック♪・・・なんて感動していると、
　修験道姿の行者様が、こう言いました。
　　「これは、遷都１３００年だから公開しているのはありません！
　　　日本が今、人身も世も乱れ、危ない時だからこそ公開したのです。
　　　蔵王権現様は平和な時には出現しません。
　　　末法のときに扉が開くのです！
　　　だから、みなさん、見物しないで、真剣に祈ってください！」
　
　確かに！と感じ入り、みんなで、真剣に祈ってきました。
　世界平和...そしてちょっとだけ、自分の事も♪

　金峯山寺があるのは、吉野山からあの修験道が修行する山々に
　連なるところ、その奥は女人禁制の修行の場。
　まさに深山幽谷の景色でした。
　ここは古くから、【神仙境】として、霊的な、いわば超パワースポットでした。
　パワースポット流行りの現代ですが、
　伊勢神宮とこの金峯山寺の吉野は、別格のパワースポットです！

　蔵王権現は、そんな吉野の山奥の岩から出現した、
　お釈迦さまと観音様と弥勒様の三位一体のお姿だそうです。
　この三つはもともと一体。
　しかし、それぞれに意味があるそうです。
　お釈迦様は、
　　　２５００年前にインドで修行して悟りを開いた方・・なので＜過去＞、
　観音様は、
　　"音を観る"今の私達の心を観て変化して救ってくれる・・・だから＜現在＞
　弥勒様は、
　　お釈迦様の入滅後５６億七千万年後、仏になることを約束されたから＜未来＞
　・・・というように、蔵王権現は人間の過去・現在・未来をあまねく救う、
　究極のお姿、憤怒の表情も、叱りつけても良い方向へ導こうという
　慈悲の現れだそうです。
　夜の闇に現れた蔵王権現の瞳は、恐ろしい形相とは裏腹に、
　慈愛が満ち溢れているようで、心が熱くなり、思わず目頭がうるみました。

　そして、こんなお話を伺っていたら、何か、キリスト教やユダヤ教の
　ふる～い思想にも通じるものを感じ、
　改めて＜信仰＞というものを見直した一日でした。

　中国大陸から伝わった仏教は、古来からの神道的な思想と同化して、
　日本では「山川草木悉皆成仏：さんせんそうもくしっかいじょうぶつ」となりました。

　これは命ある動物だけでなく山や川、草木に至るまで、
　この世のすべては仏に至る...
　つながっているという思想。
　大自然そのものが、神であり仏であり、そして自分である・・ということでしょう。

　日本の【信仰】は、いわゆる
　　＜神様、仏様、キリストさま♪＞
　・・・というように、ありとあらゆる【宗教】を受け入れます。
　これは、【宗教】を信じない"不信心"でも"不節操"でもありません！
　
　【宗教】と【信仰】は違うものだと、私は思っています。
　ときに、【宗教】は政治や権力に利用され、ねじ曲がることもあります。
　集団としての規律や戒律に縛られることもあります。
　しかし、【信仰】は、個々の心の中にしっかと根付いたもの。
　何ものにも揺らがない"心"のあり様です。
　
　日本人はよく、海外の方に「私は無宗教です」と言います。
　海外では、"無宗教"ということは
　「神仏、超自然の力を何も信じない！」ということ。　
　しかし私達日本人は、食事の前には
　　「（あなたの命を）いただきます」と命あるものすべてに感謝し手を合わせ、
　　「（神様の）罰があたる」事はしないようにと日々自分を戒め
　・・・というように、
　心にあつい【信仰】を持っています。
　しかも、ひとが【信仰】するものを排除しないで、攻撃しないで、
　一緒に信じましょう♪・・・というスタンスです。
　なんと素晴らしい、広い心でしょうか！！！

　しかし、日本ほど、自分の国の歴史、信仰、アイデンティティーを、
　教育されず、知らずに育つ民族はいません。
　国旗も国歌も、タブーな感じがあって。。。
　こんな国は、この地球上、どこにもありません。
　私達日本人が、しっかと自分たちの土台を知り、見極めれば、
　きっと、このような心のひろ～い、素晴らしい"考え方"が
　もっと世界に影響をあたえ、
　世界はもっと"平和"で"幸せ"になるのではないかとおもうのですが・・・。
　
　いろいろな意味で、日本人の発想で生まれ出でた蔵王権現は、
　本当に、世界を救う"思想"なのかもしれません。
　
　帰りは、混雑を避けても７時間半。
　蔵王権現への道は遠かったのですが、
　なぜか疲れは感じず、すがすがしい心だけが残りました。